つまらぬものを斬ってしまった

誰の琴線にも触れないであろう日常のカタルシス

心の清らかなものにだけ勝利の女神が微笑む

会社の忘年会に中3の娘と参加したら

目玉のジャンケン大会で

娘がぶっちぎり優勝

 

どーも、まままっこりです

 

いやー、もー自慢の娘ですわ

ビンゴ大会とは別の種目で

参加者全員100円ずつ集めて

勝った人が総取りの 

なぜか一番盛り上がるゲーム

 

みんなに番号が渡され

トーナメント形式で勝ち上がっていく

肩書きも年の差も関係なく

ただ強い奴のみが征する

 

何を隠そう

前年度のジャンケン大会も

娘が優勝したのだ

前年度の景品は商品券1万円分

そして今年は現金4千円

 

現金4千円・・・

自転車や松坂牛1万5千円相当よりも

掃除機よりも電気圧力鍋よりも

みな現金が好き

 

ジャンケン大会のために生まれ

ジャンケン大会の女神に愛された娘よ

 

忘年会の会場に彼女が現れると

皆がヒソヒソと噂する

 

「去年のチャンピオンよ・・・」

「強敵だ・・・」

 

彼女はとゆーと、いたって普通に

店員さんにウーロン茶を頼み

慣れた手つきで鍋をつつき

サラダやから揚げを取り分けて皆に配る

 

油断させているのか・・・

皆が警戒するのもよそに

「今年の料理は例年よりもいいね」

なんて余裕しゃくしゃく

 

そして始まったジャンケン大会

 

私の代わりにエントリーした娘は

一回戦の相手をなんなくチョキで撃破

 

二回戦はパーでアイコ

からのチョキで撃破

 

三回戦の相手は社長

娘にも流石に緊張の色が見える

私の立場を少し心配したのか

ちらっと私を見てきたので

「大丈夫、あの人は社長ではなく

タックンのお父さんと思いなさい」

タックンとは社長の息子で、娘の部活の後輩にあたる

気を取り直した娘は

やっぱりチョキで社長をも倒した

 

強すぎる・・・

 

なんて強いチョキなんだ

 

まさに無敵のチョキ

 

娘のチョキは他の人のチョキとは明らかに違う

 

きっとゴン・フリークス

ジャジャン拳にも互角なのではないか

 

なんかこー、覇気をまとっている

 

私の知らない内に念能力の修行でもしたのか

それともなんかしらの悪魔の実でも食べたのか

確かに娘はカナヅチだが・・・

 

そんなことを考えてるうちに

勝戦が始まった

相手は美人フロント嬢の迫田さん

前回の「叩いて被ってジャンケンポン」の

チャンピオン保持者だ

相手にとって不足は無い

 

 

しかしもう、何人かは気づき始めている

彼女が超スーパーグレイテストワンダーチョキの使い手であることを

迫田さんほどの使い手なら

きっと早々に思っただろう

 

きっと次もチョキを出すと

 

誰もがそう思ったその時

 

「最初はグー、ジャンケンポン!!」

 

一瞬の静けさの中

 

全てが見つめるその先は

 

 

 

可愛らしい握りこぶしが二つ

 

 

 

グー・・・だと?

 

そ、そんな

 

迫田さんに焦りが生じた

 

娘はその一瞬の隙を逃さない

 

「アイコで、しょっ!!」

 

迫田さんの手は

まるで白旗を意味するかのように

大きく開き

わなわなと震えていた

 

パーを出す気は無かった

それどころかパーだけは出すまいと思ってた

なのに何故・・・

いや、出さされた

彼女のチョキの前には

全てをさらけ出さずにはいられない

圧倒的実力の差・・・

力強く、それでいて優しく

時には閃光のように鋭く

それでいて陽だまりのように暖かい

 

いつしか彼女のチョキはチョキを置き去りにした・・・

 

こうして

今年もジャンケンの女王は

涼しげに優勝賞金を手にし

私の横で4個目のから揚げをほおばっていた

 

恐ろしい子!!

 

 

後から社長に

「卒業したら、いつでもうちに就職しなさいね」

と、一目置かれることになるが

それはきっと、社長なりに

元を取ろうとしているのだと

娘は疑っている

 

それからビンゴ大会の景品は

私のクジ運の悪さで

最下位のシャンプーセットだった

ハム&お米セットを狙っていたのに・・・

 

帰り道、娘が私にこう言った

 

「来年はもう、高校生だし

忘年会は卒業するね

ママ一人で頑張るんだよ」

 

とゆーことは、娘は殿堂入りだ

誰も娘を越えられないまま

娘は伝説となるだろう