それもこれも聖なる日の聖夜のせい【その１】
約束を
果たしに来たよ
どーも、まままっこりです
確かに
旅行ってテンション上がるもんだと思う
上がってなんぼ、上げてなんぼ
自分の事を誰も知らない土地で
開放的な気分になるのは無理も無い、とは思う
そしてそれが
クリスマスって日だった場合
あの、１年を通して
人々が１番浮かれる瞬間だった場合
輪をかけてハッスルしてしまうのは
もっともな行為だと思う
でもね
それって原則として２人以上が好ましいと思うのね
クリスマスって特別な日に
テンションの赴くまま旅行して
最高に楽しい瞬間を記憶に残すとしたら
たぶん「最低でも２人以上で過ごす」ってのが
鉄則だと思うのね
別に
恋人じゃなくてもね
家族でも、友達でも、同僚でもいいじゃない
百歩譲って愛犬とかでもいいと思う
とにかくクリスマス旅行において
人生のメモリアルに刻んでいいのは
対、相手がいるって事だと思う
や、誤解しないで欲しいのは
「お一人様」を否定してるわけじゃないってこと
「あえて一人なんですけど何か？」って人はね
いんですよ、それで
確固たる信念のもと「一人」って人はね
全然この中に含まれてないから
いんですよ、胸張って
しかも、このクリスマスの真っ只中に
「あえて一人で旅をする」
っていう選択とってる人がいたら
それもうサンタクロースですから
人畜無害で有名な
サンタしかあり得ないですから
人々に夢と希望しか与えないんで
こっちもうっかり餌とか与えないでください
あ、トナカイにも与えないでください
いつもの餌食べなくなっちゃうんで
カリカリのヤツ食べなくなっちゃうんで
なんたってサンタは孤高の存在ですからね
油断したら煙突とかから家の中に入ってきちゃうけど
なにしろ人里離れたとこに一人で住んでるんで
話し相手、トナカイしかいないんで
法律とかそっち方面、疎い方なんですよ
不法侵入って概念無いんでね
私もね、陰ながら応援してます、ほんと陰ながらだけど
なるべく視界に入らないよう、申しわけ程度の
草葉中の草葉の、厳選された草葉の陰から
ほんのりとした視線を送りながら
そっとしておきましょうね、皆さん
で、何が言いたいかって
旅行先で一緒にクリスマスを祝う相手ってのは
事前に用意するべきアイテムであって
現地で適当に見繕うもんじゃないってことなんですよ
まして、ナンパなんてね
まして、国内の離島のド田舎でね
まして
ましてや
市役所の敷地内でなんてね
もってのほかだっつーのに
いるんだな
世の中には
クリスマスに市役所でナンパするヤツ
そんで市役所でナンパされるヤツもいるって話
今からその一部始終を長々と熱弁していくから
用意はいいかオーディエンス
ｲｪｰｲ
てか
クリスマスに市役所行くヤツ自体も
稀ぐらいに思ってたけど
そこは私の勉強不足に他ならなくて
意外にいた、つーか、けっこういた
まー、私もその一人で
昼の仕事が終わって、その帰りに
夫に頼まれて市役所に「マイナンバー入りの住民票」
取りに行ったんだけど
時計は１５時をまわったくらいかな
その日は夜の仕事が休みだったから
今日くらいしか行くチャンスないなと思って
行ったの、市役所に
そしたら
すげーいっぱい人がいる
ごった返してる、いつも以上にいる気がする
やっぱ年末だからかなーって
そん時はあんま深く考えてなくて
それより何より、暑くない？ここっつって
もー、暖房効かせ過ぎじゃない？っつって
こうなったらパーカー脱いじゃうよー、つって
脱いだはいいけど、私
眩しい位に真っ赤なＴシャツ着てたの忘れてた
不覚・・・
なんでこんなＴシャツ着てきてんの
私だけシャア専用みたくなってるし
市役所に来たつもりだったけど
ホワイトベースに乗り込んだぐらいのアウェー感
でもまー、着てきちゃったもんはしょうがないので
なるべく目立たないように
４１歳の赤い彗星は静かに佇んでいたのだけど
田舎のポストぐらいの趣きで佇んでいたのだけど
ふと
私の座ったイスの周りを見たら
なんかカップルっぽいのが多いのね
しかも、どこ見ても幸せオーラ出さずにおれない感じで
わき目も振らずにイチャイチャしまくってんだよね
暑さの原因はこれか、と
妙に納得すると共に
おいおい、クリスマス気分って
こんなとこまでコミットしてくんのかー
全く気が抜けねーな、って思った瞬間
市役所の役員が
「おめでとうございます」
って言ってるのが聞こえて
気付いた
さすがのポストも
あ、婚姻届か
結婚記念日をクリスマスにしてやろうと
目論む輩の巣窟か、ここは
どうりで、どこもかしこもこれ見よがしに
指輪が光ってるわけで
気付いてしまったからには
早々に立ち去らなくてはと思い
チャッチャとブツを手に入れて
即効、退散したわけですけど
その帰り
エレベーターを待ってたわけです
２階なのに
ここ、２階なのに
俄然、階段のが早いのに
なぜかエレベーターを待ってしまった
それが運の尽きだったっていうか
市役所のエレベーターって
クソほど遅い
待っても待っても来ねー
中で誰か軽く出産でもしてんの？って
不安になるくらい来ねー
後ろに続いてたカップルとかが
諦めて階段を降りてくなか
私と、そのちょっと後ろに男性がいて
その人もけっこうな時間待ってる
しかもけっこう近い
スタンドか？ってくらい近い
こいつあきらかに距離感間違ってんだけど
もしかして、一番前狙ってんのか
絶対やらねー
無言の攻防というか、ここで会ったが百年目
気付けばそいつとの一騎打ちみたいになって
今、階段使ったら、なんか負けだなって
私の方はそれぐらいの心意気でいたんですが
男性の方はそうでもなかったようで
「遅いっスね」
なんてフレンドリーに話しかけてきたわけ
油断させる気ね！？この私を
油断させて一番前を乗っ取る気ね
慌てるとでも思った？この私が
あえて、シカトなんて卑怯なマネはしない
受けて立つわい
「ほんとですねー」
っつってやった、余裕で
余裕しゃくしゃくで
これ以上会話を広げず、尚且つ
冷たくならない感じの大人の対応
そしたらスタンドのヤツ
「暑いっスねー、奄美
こんな暑いと思わなかったなー」
っつって返してきた
ほんとですねー、はさっき使ったから
「そうですねー」
っつってやった
渾身のボキャブラリーで
「でもいい所っスね
思ったより田舎でもないし」
「そうですねー」
早くもボキャブラリーが底をついた
「海も近いし、いつでも行けるなんて
いいなー」
「そうですねー・・・」
くっ、こいつ・・・！
スタンドのくせに場を回し始めた
そう思っていると
「あ、そう言えば大河の
”せごどん”って・・・」
ヤツが急に「せごどん」トーク持ち出してきたから
流れるように自然に提供してきたから
一気に、気ぃ緩んだ
なにせ「せごどん」の撮影がこの地で行われたのは
全島民の記憶に新しい大好物なネタ
当然、島全土が沸いたわけで
思わず私も前のめっちゃった
「なになに？せごどんがどーした？」
みたいな顔して思わず聞き入っちゃった
その間に「ピンポーン」って鳴って
エレベーターが降りてきて
まんまとヤツに先を越された
やーらーれーたー
完っ全に油断した
私の方が先に待ってたのに
まさにウサギと亀な状態
干支で言ったらヤツはネズミで
私はマヌケな牛さんですよ
もうこいつとは口聞かねー
そう思って無言のまま１階まで降りた
エレベーター降りた先は駐車場になってて
私は自分の愛チャリ(通称レッドジャガー)
の元へと急いだ
「あのー」
あのー？
あのー、って言った
ヤツが、私に
でも無視
無視、無視、
気付かない振りして行っちゃえ私
「あのー、すいません」
あ、ダメだ
無視できないヤツだ
知ってる、この感じ
道聞こうとしてるヤツの感じ
私、なぜか道を聞かれる体質っていうか
道を聞かれることにかけては
右に出るものがいないって自負がある者です
以前にも紹介した通りなので
気が向いたら読んでみて↓
そんな私が察しちゃった
独特の迷子オーラ、感知してもーた
「はい」
仕方ないから振り返ったよ
迷子に道を示してやるのは
私の使命だかんね
さあ請うてくるがいい、子羊よ
年の頃で言ったら２５～３０歳くらいか
もしかしたらも少し若くも見える男子だった
パッと見、派手め
まず目についたのが、圧倒的なグリーン
なんの柄かわからないけど、とにかく柄物のジャケット
柄物の中でもひと際柄物の、緑色のジャケット
お洒落上級者しか着ないヤツ
菅田将暉しか着ないヤツ
私が今、この場でパーカー脱いだら
二人でバングラディッシュ出来上がっちゃうくらい
危険な配色
それから
やたら遊ばせた髪、むしろ遊ばれてる髪
そしてその派手めな出で立ちとは裏腹に
ビックリするほど薄味の顔
芸能人で例えるとしたら
薄すぎて塩顔ですらない、もう水、水顔
そんな水で薄めたさだまさしがね
「この辺でコーヒー飲みながら
軽く食事できるとこありますか？」
って、言ってきたから
「お車ですか？」
って、とりあえず聞いてみたら
「徒歩です」
とのことだったので
「この辺で一番近いとこでしたら
そこの大通りを真っ直ぐ行ったとこに
サンドイッチカフェがありますけど」
って、答えたんだけど
「んー、サンドイッチって気分じゃないなー」
とか言い出しやがるわけ
知らねーよ、お前の気分なんて
軽くっつったからサンドイッチなんじゃねーかよ
なんでこっちがスベッたみたいになってんの？
「じゃあ、喫茶店とかがいいですか？」
って、こっちも気ぃ使って聞いてやったら
「や、そういうんじゃなくて
もっとこうカフェ系でピザとかパスタがあるような
ついでに奄美っぽい、いい感じの店ないですか？」
ねーよ
徒歩圏内でそんなしゃれオツな店はねーよ
あっても今の時間は準備中だよ
だいたいカフェ系って何だよ
だったらサンドイッチカフェもカフェ系だろが
「パスタかー、じゃあ、
そこの商店街に”瀬里奈”(せりな)っていう
お店があるんですけど、そこだったら島っぽい料理もあるし
コーヒーもありますよ？
いい感じのカフェ系かはちょっとわかりませんけど」
って、私かなり丁重にお答えしたんですけど
さだ「女子が好きな感じですか？」
は？
さだ「映えるヤツ、なにかありますか？そこ」
何言ってんの？こいつ
何宣言？新しい関白宣言？
私「や、ちょっと映えるのは無いかも・・・」
さだ「できれば女の子が喜びそうなとこが
いいんですけど」
あ、彼女とでも行くのかな？
デートか、そーかそーか
クリスマスだもんね
そういうことなら
私「それでしたら、こっちの方向にちょっと行ったら
島のパンケーキ屋さんってのがあるんですけど
軽食もあるし、女の子連れて行ったら喜ぶかも」
さだ「あ、いいっスね、パンケーキか
なんていうお店？」
私「えーと、”Ｎａｌｕ”(ナル)って言うんですけど
Googleマップで探した方が早いんじゃないかな」
一応、軽く道を説明してから
早々にその場を立ち去ろうとしたら
また呼び止められた
さだ「あ、ちょっと待って」
私「は？」
さだ「今、お暇っスか？」
私「いえ、全然暇じゃないです」
さだ「え？マジすか？
良かったら一緒に飯、行きません？」
ん？
今、私はっきり「暇じゃない」って
言ったよね？
何をどうしたら「飯行こう」になんの？
バカなの？さだ君
私「や、それは遠慮します」
今度こそ、はっきり断った
断ったよね？
さだ「え？マジすか？
俺、一人で旅行してるんスよ
超フリーなんスよ
一緒に遊びましょうよ」
知らねーし
遊ばねーし
一人で超フリーで旅行中とか
時期が時期だけに超ヤベーし
逃げよう
私「いえ、急いでるんで
この後、用事あるんで
じゃ、気をつけて」
チャリで逃げた
はー、ビックリした
マジ、ビックリした
内心、すげービビッた
何あれ、超チャラいんですけど
チャラまさしなんですけど
１０年ぶりくらいにナンパとかされたんですけど
こっち一体何歳だと思ってんですか？
下手したら息子ぐらいの感じでしょうが
ほんとにね
もうね
思った
あいつ市役所で何してたの？
そこだけちょっと気になってる
公共中の公共、ＴＨＥ公共の場「市役所」で
シングル旅行者が迷子ついでにナンパする！？
(ﾟДﾟ)ﾊｯ!
もしかして
新手の詐欺？
あっぶねー
危うく迷子の皮を被った詐欺に
引っかかるとこだった
たぶん、最終的にダサい財布とか買わされるとこだった
金の数珠とか水晶とか法外な値段で買わされたに違いない
そんなことを思いながら
とりあえず家路に着いた私は
もうこれでヤツに会うことは二度とあるまい
そう胸を撫で下ろしていたわけですが
全然、序の口だった
物語の本番はこれからだった
でも一気に書きすぎて疲れたから
今日はもう寝る
続きはまた次回
(ﾟДﾟ)ﾉ
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